大腸肛門セカンドオピニオン

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便潜血検査の必要性について 始めまして。
今年医療機器メーカに入社したものです。 便潜血検査の必要性について教えてください。 大腸がんの早期発見につながるわけではなく、日本には痔の患者も 多いとの事で、陽性率も高いとのこと。 そんな中なぜ、便潜血検査の需要が高いのですか

便潜血検査は早期癌の発見には無効ですが進行癌は効率よく陽性になります。大腸癌 は進行癌でも手術により6〜7割位の方は完治します。このようなことから国民全体に便 検査をおこなうことで大腸癌の死亡を減らせる「経済的効果」があることが集団検診 を専門にしている先生が証明しました. (このデータを統計的におかしいと批判しているのが雑誌などで有名な近藤誠医師です。 しかしこの「経済的効果」は日本だけでなく海外でもひろく認められています) したがって、「集団検診」としておこなうには意味のある検査なのです。しかし、 「自分が病気なのか?お金と手間をかけてもいいから早期癌も見つけたい」と希望さ れる患者さんには便潜血検査は期待にはこたえられないものです。高級な人間 ドックなどでは最初から精密検査(内視鏡が主流)をおこなうのはこのような事情からです


実は身内が大腸ガン検診で潜血反応があり、受診して内視鏡による 検査を受けました。結果、ポリープが2つあり、その際に組織をとって 病理検査したところ、ガン化しているとのこと。 ここでサイト内で勉強した私に疑問が湧きました。 確か出血を伴うようになってからではかなり進行していて、開腹手術でなくては ならないと記してあったとおもいます。 出血を伴っていても粘膜下に達していないこともあるのでしょうか?

「便潜血検査で粘膜内がんが見つかるか?」・・・・これは非常に重要な御質問です。

潜血検査は早期がんの大部分をみつけることはできません。
潜血反応が陽性の人と陰性の人を大腸内視鏡をおこなうと、同じ頻度で「大腸ポリープ」と「早期大腸がん」がみつかります。(有名なデータです)
そして進行がんは圧倒的に潜血反応が陽性の人の方に多くみつかります。
しかし、潜血反応が陽性の人の方の多くは何も異常がみつかりません(つまり出血源は痔ということ)。
つまり潜血検査は圧倒的に多い痔の患者さんと少数の進行大腸がんの方を検出しているのが実状で早期のがん(特に平坦型)が出血する可能性は低いのです。
御相談のケースは非常にラッキーにたまたま早期のうちに出血したか、たまたま痔があり(日本人の3人に一人は痔があり、いつ潜血反応が陽性になっても不思議はありません)陽性になったかのどちらかだと思います。

便潜血検査は早期がんの有効な検出になっていないというのは内視鏡専門医の多くには常識です。


お身内の方のように便潜血検査陽性となり検査を受けて早期がんを見つける方もたくさんいます。しかし、「毎年、便潜血検査を受けていて陰性なので安心していた。陽性になってから検査したら進行がんだった」という方をもっと多く私たちはみています・・・・

--- では便潜血検査は無意味か?・・・というとそうではありません。
大腸がんは進行がんでも手術で助かることが多いのです。
これは、たとえば、肺ガンと対照的です。
日本国民全体におこなっている便潜血検査は「日本人の大腸がん死亡を減らす」という国家的意義はあります。
しかし、「粘膜内がんのうちに治療したい」という個人の願望には不十分なのです