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我々は「内視鏡検査でアルツファイマー病が伝染する可能性」を検討すべき時であると考えます 2010/11/14 本郷メデイカルクリニック 鈴木雄久
資料
Nature 457, 7233 (Feb 2009)
プリオンはアルツハイマー病にも関係する
アルツハイマー病では、可溶性アミロイドβ(Aβ)ペプチドオリゴマーが中心的な役割を果たすという仮説は十分に立証されているが、Aβオリゴマーが神経細胞に影響を及ぼす際の基盤となる仕組みは明らかにされていない。可溶性Aβオリゴマーに対して高い親和性をもつ細胞表面受容体が神経細胞上に存在することの証拠がいくつか示されており、これがアルツハイマー病の病態の中心となると考えられている。今回、細胞のプリオンタンパク質PrPCがその受容体候補であることが突き止められた。脂質ラフトと会合する細胞膜糖タンパク質であるPrPは、Aβオリゴマーと高い親和性で選択的に結合し、ペプチドの有害な作用を仲介する。今回の結果は、PrPCに特異的な薬物がアルツハイマー病に対する治療薬となる可能性を示しており、また、感染性プリオン病とアルツハイマー病との予想外のつながりを示している。
Cell. 2009 Jun 12;137(6):997-1000.
上記と、ほぼ同じ。アルツファイマーの原因タンパク質がプリオンと結合することを確認したScience October 21, 2010
感染性アルツハイマー病タンパク質が脳に侵入する
蓄積されたタンパク質を含むアルツハイマー病に関与する脳組織は、脳以外の体の部位に投与しても「感染」を引き起こすことが、マウスを対象とした新しい実験により報告された。今回の発見は、蓄積されたタンパク質が原因のアルツハイマー病およびその他の神経変性疾患の発症を解明するきっかけになるかもしれない。アルツハイマー病の特徴のひとつは脳内の神経細胞間でのアミロイド斑の蓄積である。アルツハイマー病の主要原因であるβアミロイドを含むアミロイドペプチドは、神経細胞内のアミロイド前駆体タンパク質(APP)から異常発生するタンパク質小片である。健康な脳ではこのような蓄積されたタンパク質片は分解除去されるが、アルツハイマー病患者では断片は蓄積し固く頑丈なプラークを形成する。最近のマウスモデルを使った試験結果から、βアミロイドを含む脳組織が健康な動物の脳に注入されると感染する可能性があることは明らかにされていた。今回Yvonne Eiseleらは、βアミロイドが脳以外の場所に注入されても疾患を引き起こすことを証明した。研究者らが脳抽出物であるβアミロイドをマウスの体内に注入したところ、マウスは数ヵ月後にアルツハイマー病の症状を発症した。注入されたβアミロイドがどのように病気を引き起こしているのかはまだ解明されていないが、βアミロイドを抹消組織から脳へと移行させるメカニズムが存在しているのではないかと考えられる。(補足:消化管粘膜の下にはわずかながら神経細胞があります。したがって内視鏡で細胞検査・ポリープ切除などをおこなうと、この実験に極めて似た現象が起きます)Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Feb 2;107(5):2295
合成されたアミロイドタンパクの脳室内注入によりマウスにアルツファイマーを発症させることに成功・・・感染性アルツハイマー病タンパク質の概念が証明された
しかしプリオン欠損(ノックアウト)マウスもプリオンが正常なマウスも同じように発症しました。ヤコブ病(狂牛病)の場合はプリオン欠損マウスはヤコブ病に感染しません。プリオンタンパク質の「連鎖反応」が起きないからです。これはアルツファイマーの原因が「感染性タンパク質」である証拠ですが、タンパク質の「連鎖反応」の主役は「現在既知のプリオンとは異なる未知タンパク(未知のプリオン?アミロイドタンパク自身?)」であることを意味しますPrion. 2009 Oct;3(4):190-4. Epub 2009 Oct 2.
プリオンとアルツファイマーの関係についてのレビュー
プリオンタンパクはアミロイドタンパク(アルツファイマーの原因)と相互作用していることは「ほぼ確実」であり、一方の異常が他方の異常を誘発すると予測する(プリオンとアミロイドタンパクが結合・相互作用・高次構造変化の連鎖反応を起こすのではないか?)Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Jun 26;104(26):11062-7
正常プリオンはアルツハイマー病を抑える(つまり、異常プリオンによる正常型の枯渇がアルツファイマーの原因かもしれない)
アルツハイマー病の発症は、β-アミロイドという小型タンパク質が脳内に蓄積することが原因とされる。そして、β-アミロイドは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)がβ-セクレターゼという酵素によって切断されることでできる。 正常プリオンを高レベルで生産するノックアウトマウスを作製したところ、β-セクレターゼの働きが阻害され、β-アミロイドの形成が食い止められたことを発見した。 一方、正常プリオンを生産できないノックアウトマウスを作製したところ、このマウスの脳内にβ-アミノイドが顕著に蓄積した。 このことから、正常プリオンの役割は、アルツハイマー病の発症を抑える、あるいは、アルツハイマー病やその他の神経変性疾患を引き起こすとされる酸化的ストレスから脳を守ることにあると推察される。もしβ-セクレターゼの働きを抑える物質をディザインできるなら、この物質は、β-アミノイドの形成を食い止めるはずだ。そうなると、アルツハイマー病の治療薬となり得ると期待がもている。
「輸血で感染する伝染病」は理論的に全て内視鏡でも感染します(HIV,C型肝炎など)。なぜなら細胞検査・ポリープ切除などをおこなうと内視鏡が血液で汚染されるからです
輸血でプリオンが感染する可能性は当初は否定されました。しかし、その後「輸血による医原性V-CJD が多発」し日赤が英国帰国者の献血制限に踏み切ったのはご存知のとおりです。アルツファイマーの方にも(実際は数は微々たるものですが)献血制限をすべきと考えますが、いかがでしょうか?他の 古い文献も紹介します
- Prion disease and Alzheimer's disease: pathogenic overlap
- Prion protein codon 129 polymorphism and risk of Alzheimer's disease
- Do infectious agents play a role in dementia? Trends Microbiol. 2003 Jul;11(7):312-7.
- Senile dementia of the Alzheimer's type: possibility of infectious etiology in genetically susceptible individuals.
- Evidence for and against the transmissibility of Alzheimer's disease
複数の論文を要約すると次のようになります
「アルツファイマーが感染性タンパク質で起こることは、もはや疑いの余地はない。しかし、それは今、既知のプリオンと深い関係がありそうだが既知のプリオン自体ではない。これは驚くことではない。感染性タンパク質(プリオン病)は酵母でさえ、数十タイプ、見つかっており、プリオン病は人類が今まで知らなかっただけで予想以上に多いようだ」我々、内視鏡医師に重要なのは「今、とれる現実的対策」です
「アルツファイマーのようなタンパク質凝集で起こる脳の病気が感染性タンパク質で起こることは、もはや疑いの余地はない。それは人類が今まで知らなかっただけで予想以上に多いようだ。現在の内視鏡の消毒システムは、そのような感染性タンパク質に対しては全く無力であり、患者と健常者で内視鏡を区別するしか有効な対策は無い」誤解の無いように言いますが、アルツファイマーの患者さんの「医療を受ける権利」を奪うべきではありません
プリオン病(タンパク質凝集アミロイドが原因で起こる病気と定義します)の可能性のある患者さんは「専門の医療機関」に集中させて医療をおこなうべきで、健常者と「全ての医療器具が交差しないようにすべき」であるという主張です
私の知人の厚生省の幹部も、この問題に関心をしめしました。大きなコストをかけずにアルツファイマーの発生が、少しでも減少できる可能性があるなら、今の日本に大変有意義だからです