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 コンピュータが炎症性腸疾患(IBD)の新しい薬を発見

  (Science trans Med August 2011)

便中DNAによる大腸癌検診」でDNAチップ(マイクロアレイ)を解説しました。この技術は新しい治療法の開発にも大きな威力をもちます

 

 IBD(inflammatory bowel disease) とは炎症性腸疾患の意味で、臨床的には「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」です。専門家により意見が分かれますが「クローン病」は慢性感染症と考える専門家も多く、通常、専門誌でIBDと言えば「潰瘍性大腸炎」の意味です

上のような方法で「IBDの患者さんで発現が増えている遺伝子・減少している遺伝子のデータベース」が完成しました。

数百〜数千の遺伝子からなります。重要なことは、個々の遺伝子が何で、どのような機能があるのか?は不明なのです。

確かなことは「チップ上の配列パターン」というデジタル化された情報だけです。 しかし、これで十分、臨床に応用できるのです。


同時に「既に臨床で使用されている何千という薬」について、その薬を服用した場合の「発現が増えている遺伝子・減少している遺伝子のデータベース」が完成しました。

そしてコンピューターが、この二つのデーターベースを比較して「「IBDの患者さんで発現が増えている遺伝子を減少させ、発現が減少している遺伝子を増加させる」作用のある薬を探しだしました。

ステロイド、ペンタサ、サラゾピリンなど「現在、IBDの治療に使われている薬」は全て、コンピューターは「認定」しました。

さらにコンピューターは「ある抗けいれん薬」も同じ作用があることを見つけました

実際に、IBDのモデルであるマウスにこの「抗けいれん薬」を投与するとIBDが治りました!


このようなDNAチップ・データベースとコンピューターによる「既知の薬の、新しい転用」は今、非常に注目されています。既に、ある胃潰瘍の薬が肺癌に有効なことが同じ方法で解り、現在臨床試験が進行しています。

この「抗けいれん薬」は何十年も臨床で使用されており「どのように使えば安全か」「どのような副作用があるか」が解明されていますから「新しく開発された未知の薬」よりはるかに安全といえます。

私見ですが・・・・・・従来、西洋医学は「病気のメカニズムを解明して、それを治す方法を考える」というアプローチでした。

この技術は「個々の遺伝子の機能は解らないが結果がよければ薬として使える」という180度逆のアプローチです。

これは「漢方医学」の理論です。漢方は何百年もかけて「経験則」で薬を見つけ出しますが、スーパコンピューターはこれを数日でしてしまう訳です。

・・・・・・DNAチップは夜空の星のようですね。スーパーコンピューター開発予算を削った政治家はもっと勉強をすべきですね。

 

以下、少々難解です・・・

理論的な方は「どうして脳に作用する薬が大腸炎に作用するのだ?投資家向けの、怪しい研究だ・・・・」と感じられたでしょう。この理由は分子生物学的に深い哲学です。人のゲノムが解読されて解ったのですが人の遺伝子は3万個しかありません。生物をブロックの玩具「レゴ」に例えるなら「3万種類のブロック」だけで組み合わさった強大ブロックです。

では、極めて原始的な動物(線虫やゾウリムシ)は何個でしょう?やはり3万前後です。

つまり「ブロック=パーツの種類」は人もゾウリムシも同じなのです。人の場合は3万個の同じパーツを「繰り返し、繰り返し何万回も使い回し」をして脳や腸をつくります。

この作成の設計図も遺伝子DNAにあり、この部分は人はゾウリムシの何万倍も複雑です。ゾウリムシは「使い回し」をしないのです

人の脳にある神経細胞と大腸にある上皮細胞は99.9%同じパーツで作られており「違いは数個のパーツと、パーツの配置」なのです

「抗けいれん薬」を口から服用した場合、吸収されて血液に乗り全身の細胞に届きます。脳にも腸にも・・・・・・パーツが共通なら「けいれん」とIBDの間に分子レベルで多くの共通点があり、同じ薬で改善するというのは分子生物学的には「予想されていた想定内のこと。今後、このような新しい「転用」はもっと見つかるはずだ」ということなのです(文責 本郷メディカルクリニック 鈴木)


レゴで作られたこの3作品とも、使用しているブロックの数(種類)は同じ