最新情報

LINK
ピロリ菌と胃癌
内視鏡・COM
本郷メデイカルクリニック



 

大腸 肛門科疾患のポータルサイト:大腸・COM(http://daichou.com)

 

 遺伝子工学による腸内細菌の研究

このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

Adobe Flash Player を取得

腸内細菌は大腸癌をはじめ様々な病気と深い関係があります。例えば2011年第15回腸内細菌学会では「腸内細菌と免疫、アレルギー、皮膚疾患、炎症性腸疾患との関係、自律神経との関係」などが取り上げられました。ビフィズス菌が(そのメカニズムには議論がありますが)、我々に有益であることは、ほぼ間違いないでしょう。

しかし、今までの研究は「腸内細菌という巨大な氷山の一角」を見ていただけでした

便中DNA診断」で記述した方法と同じ手法(DNAマイクロアレイ)で人の腸内細菌の全ての遺伝子を調べるという研究が進行中です。

Nature 473 (7346), May 2011に、「とりあえず最初の成果」が報告されました

人の腸内細菌叢(Enterotype)は下のような3つの「タイプ」があることが解りました。これは国籍、年齢、人種による差では無いとのことです。

疾患との関係は・・・・まだ、発表はされていません。

 


私見・・・・・今まで「漠然と善玉・悪玉に分類」していたのに比べると「革命的な研究」と評価できます

しかし、不満なのは「大腸内・細菌叢」と「小腸内・細菌叢」に分けて解析されていない点です。

「小腸内・細菌叢」が様々な全身の病気と深い関係があることは、今や常識です。例えば同じ食事・運動をしても「コレステロールが高く太る人」とそうでない人がいるのは「小腸内・細菌叢」に「脂肪を分解する細菌が多いか少ないか?」が関係しています。

一方、大腸は基本的に「便の貯蔵庫」であり栄養の吸収はおこないません。「大腸内・細菌叢」が全身の病気と深い関係がある可能性は低いでしょう。これが関係するのは・・・・「大腸癌の発生(=細菌が変異原性物質を産生し大腸粘膜細胞に遺伝子の変異を起こす)」です。


腸内細菌の「よくある誤解」

1:腸内には悪玉菌と善玉菌がいる・・・・・腸内の細菌は「自己を増殖させる」ために腸内に住んでいます。我々のためではありません。一つの細菌でも何万という代謝をおこなっています。このうち「我々に有益な代謝が一つ以上見つかった菌」を善玉、「有害な代謝が一つ以上見つかった菌」を悪玉と「便宜的に」呼んでいるだけで科学的な用語ではありません。研究者によりビフィズス菌は「有益な作用」が最も多く見つかっていますが、これもビフィズス菌の代謝の「一部」であり我々の護衛隊ではありません。例えば、我々の腸内を空っぽにして「大量のビフィズス菌培養液」を肛門から腸内に注入すれば・・・・・・ビフィズス菌による敗血症で人は死亡するでしょう。

尚、膣内にいる「デーデルライン桿菌」は膣内に外部からの病原体侵入を防御し、胃酸が口からの病原体侵入を防御しているのと同じ働きをしており「善玉」でることが科学的な事実です。このような「純・善玉菌」が腸内にもいるのか?これは、まだ仮説の段階です

最も解りやすい例を言うなら・・・・我々の皮膚には無数の「ブドウ球菌」「連鎖球菌」がいます。これらは我々の皮膚に他の病原菌が侵入するのを阻止します。「ここは我々の棲みかだ!出て行け」と撃退してくれるのです(善玉です)。しかし、我々の皮膚に傷ができると彼らは体内に侵入し敗血症を起こします。事実上「ブドウ球菌」「連鎖球菌」は「世界最高数の殺人を起こしている菌」です

2;兼気性菌は悪玉・・・・・そもそも腸内には酸素が無く、腸内細菌の大部分は嫌気性です。しかし酸素に触れると即死するため培養・研究が困難だったのです。上記の研究は便中の「細菌の死骸=細菌のDNA」で解析しています。この点が「ブレークスルー」と言えます

3:乳酸菌を摂取すると大腸癌予防に有益・・・・・これは腸内細菌の研究者なら「最も最初に注目する」問題です。あまりにも古い論文で出典は忘れましたが、臨床比較試験で「乳酸菌の摂取に大腸癌予防効果は無い」ことが科学的に証明されています