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下痢型過敏性大腸症の患者さんへのメッセージ

みんな悩んでいる
プロのスポーツ選手で練習では絶好調なのに試合のここ一番という時にがっかりさせられる選手がいますよね・・・そのような人たちのなかには過敏性大腸症候群の方が、います。精神的ストレスがくると体がコントロールできなくなり腸の調子が悪くなるのはみんな同じなんですね。
時々、消化器病学会などにいきますと、私なども発表直前になると緊張のためよく便意をもよおします、トイレにいきますと、かなり混んでいまして、大変な思いをします。他の多くの先生たちも同じ状況のわけです!専門の医師でさえも、このように過敏性大腸症候群の人がたくさんいるわけです。

過敏性大腸症候群のメカニズム、なぜ下痢するのか?
通常は大腸に便があっても直腸まで便がおりてこないと便意を感じません。直腸に便意のセンサーがあるからです。朝、食事をすると大腸が動き出して便が直腸に運ばれて便意を感じます(胃・結腸反射といいます)。普通は胃・結腸反射が起こるのは1日一回(大抵の方は朝食時)なのですが「反射が過敏」になっていと食事以外に心理的ストレスで腸が動き出し直腸に便が運ばれてしまい便意を感じるわけです。また、通常は直腸にわずかの便がきても「今日はすんだから明日にしよう」と便意を無意識のうちに抑制し排便が1日1回になるようにコントロールします。しかし、過敏性大腸の方は直腸のわずかの便でも排泄しないと「不安」で、「便意の抑制」ができないのです。これは潔癖症の方が「何度も手を洗わないと不安」なのや強迫神経症の方が「鍵を何度も確認しないと不安」なのに似ています。基本的には「几帳面・完璧主義・神経質」な性格によるものです。

何らかのトラウマが原因のことも
緊張した時に下痢をすることは子供の頃、だれでも経験のあることです。多くの場合は思春期をすぎると自然に治るものです。しかし何らかのトラウマが原因で成人になってからも長期にひきずることがあります。たとえば「デート中に下痢になって恥ずかしかった」「大事な取引の時に下痢になって失敗した」などの直接「排便に関するトラウマ」が引き金になって過敏性大腸になってしまう方もいます。排便とは直接関係が無くても人生に絶望するような大きなトラウマ(離婚、失恋、左遷など・・・)から「不安神経症」とになり不安の対象が「自分の体内」に向かい・・・過敏性大腸になる方もいます。

過敏性大腸症候群の患者さんはインテリジェンスの高い方が多い
前記とは逆に「人生に挫折など知らない。毎日ビジネスで大きな利益を上げている」という方にも過敏性大腸の方がいます。このような方は「几帳面・完璧主義・神経質」な性格が成功の原動力になっているといえます。「周りに無頓着で鈍感な人は過敏性大腸症候群にはならないし、仕事でも成功しない」ということです。精神的に問題があるわけではなく、研ぎ澄まされた神経の持ち主といえます。

専門医に精密検査を受けましょう
過敏性大腸症候群がポピュラーになり、最近は消化器専門でない先生も過敏性大腸症候群の診断をくだすこともあります。しかし炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、アメーバ赤痢、大腸結核などが過敏性大腸と症状がよく似ています。過敏性大腸症候群と診断する前にこれらの病気が無いか、検査をしておくべきです。検査をして異常がないことがわかると、それだけで安心して症状が軽くなることが多いです。

治療の第一歩は病気の認識
まず過敏性大腸症候群という病気を理解し、みんな悩んでいる病気であり自分だけが特殊ではないということ、インテリジェンスが高いことへの代償なのだと割り切りましょう。自分の性格を自覚しストレスを中に溜め込まず、規則正しい時間的にゆとりのある生活と休日の十分なストレス発散を心がけましょう。

痔を合併していたら・・
患者さんは頻繁にトイレにいくことで痔(切れ痔、脱肛)でも悩んでいることが多いです。肛門に病気があると、どうしても便意が敏感になります。痔は比較的容易に完治できます。痔を治すと、下痢症状が幾分、改善し、排便時の苦痛からも開放されます。

重症化する前に治療を
大部分の方は「自分は過敏性大腸である」と自覚しなが「若干、消極的」というだけで、あとは通常どうりの人生を送れます。しかし、不幸にして一部の方は「重症化」します。外出できなくなり家に引きこもったり、夫婦間がうまくいかなくなり離婚したり、仕事への意欲が失われ左遷・失業という事態に陥ります。そしてトラウマとなり更に症状が悪化するという悪循環に陥ります。このようなことになる前に手を打つべきです。

薬は試行錯誤で
むやみに薬にたよるべきではありません。精神的不安が強い場合は消化器科ではなく心療内科に紹介されて心理カウンセリングや精神安定剤が必要になります。患者さんによって「ブスコパン(収縮を抑える薬)」が効いたり「ラックB(整腸剤)」が効いたり「サラゾピリン(腸の炎症をとる薬)」が効いたり「便を固くする薬(コロネル、ポリフル)」が効いたりします。どれが効くかは試行錯誤で見つけることになります。

新しい治療薬(セロトニン阻害剤)
最近、下痢型過敏性大腸の新しい治療薬「セロトニン阻害剤」が米国で発売され高い効果が認められています。(セロトニン・・腸を動かし下痢を起こすホルモン)。この薬は現在使用されている薬(整腸剤、便を硬くする薬など)が効かない方にも効果があります。数年以内に国内でも承認される予定です。