風邪で下痢がひどい・・・・抗生物質は有効か?
風邪の季節が来ました。
「風邪(正確には急性上記道炎)の原因の多くは細菌ではなくウイルスであるから抗生物質は飲むべきではない」という話を聞いたことがある方が多いと思います。
さて風邪症状に下痢が合併すると「急性胃腸炎」と呼ばれます。やはり、これも腸内でウイルスが増殖することで起きます
このような場合、抗生物質は「有効でない。使う必要は無い」というのが医学の教科書的記述ですが・・・・・・・・実際の臨床では抗生物質が使われることが多いです。そして患者さんも抗生物質を飲んだらすぐに下痢がよくなった経験が多いと思います。これは「暗示の効果」なのでしょうか?
最近のScience(12.2011,vol334)に興味ある報告がありました
我々の腸管(気道も同じです)は、表面が「強力な殺菌作用のある粘液バリアー」で覆われています。(今、話題の自然免疫の一部です)
ウイルスというのは「極めて原始的・単純な粒子」で、このバリアーを破れません
一方、腸内細菌はウイルスよりもはるかに進化した複雑な・高等生物で粘液バリアーで殺されないように様々な「バリアーを破る分子」を表面に持っています
ウイルス性胃腸炎が起きる場合はウイルスが、自然免疫バリアーを破るのに腸内細菌の分子を利用しているらしい・・・という報告です。
すると・・・・ウイルス性胃腸炎にも抗生物質は「有効かもしれない」ということになります
実際にマウスを使った実験で腸管ウイルスの感染が抗生物質で阻止されたことも上記報告は述べています。
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典型的なウイルス・本体は1〜2種類のタンパク質が格子状に組み合わさった単純な構造で生物というよりも「結晶」に近い
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これに対し、細菌は自然免疫を突破するために様々な武器となる分子を表面に持っている「高等生物」です
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風邪に抗生物質を出すべきか?という議論は臨床医の間の昔からの古典的議論です。
この問題は実は予想以上に複雑で、この報告は、議論に再び一石を投じそうです。
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