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内視鏡をしても病気が見落とされることがある
もうずいぶん前になりますがニュースキャスターの逸見正孝氏が胃がんでなくなりました。氏は毎年、胃カメラの検診を受けていたとのことで「検診を受けても意味が無いのでは?」との主張もマスコミに登場しました。 逸見さんが私たちに提示した問題点は二つあります。 第一は毎年検診を受けても早期発見の困難な非常に進行の早いがん(スキルス胃がんといいます)があるということ 第二はさまざまな要因により内視鏡にも死角があるということです。 逸見さんは不幸にして非常に進行の早いスキルスがんでした。逸見さんが不幸な転機となった最大の原因はスキルスという進行の早いがんだったということですが、前年の検査で見落としがあったか否かについては内視鏡学会でも問題になったのですが結論はでませんでした。逸見さんの場合が該当するかどうかは不明なのですが一般論として、内視鏡といえども100%観察できる訳ではなく、いわば「構造的死角」というべきものが存在します。胃や腸には粘膜のひだがあります。このひだが大きいとひだの陰が死角になることがあります。また胃には多量の胃液があり大腸には(下剤できれいにしても)便が残っています。検査中はできる限り胃液や便を吸引して除去するのですが限界があり、胃液や便に隠れた小さな病変を見落とすことになります。 これらの「構造的死角」は仕方がないといえますが,経験の未熟な医師では「見えているのに見えない(病変と認識できない)」という「やぶにらみ見落とし」もあります。例えば血液検査のように「CEA(腫瘍マーカー)は2.5以下が正常。それ以上なら腫瘍があるかもしれない」というふうな客観的データを出す検査なら見落としは無いのですが、内視鏡のような「画像診断」は内視鏡医師の経験によって全然正確さが違ってきます。内視鏡事故と同様このような見落としは経験の未熟な医師が「営利目的」に短時間ではっしょった検査を行うと発生します。一般の方の感覚からすれば「検査が短時間ほど名人」と感じるかもしれませんが早すぎるのも問題です。 昔からある有名な医師の勉強会に「早期胃がん研究会」というのがあります。月一回、全国から専門医が東京にあつまり、消化器画像診断の技術の向上のため診断技術を競うものです。 昔から内視鏡医の間では「カメラは一万件やったら一人前」と言われていました。内視鏡の画像診断は専門外の医師が数年研修した位で身につくような単純な技術ではなく「技を極める」世界なのです。 このようなことを知らない一般の患者さんは「内視鏡なんてどこも変わらない」と考えとりあえず近所ですまそうと考えます。しかし私たち内視鏡専門医は自分が内視鏡を受けるときは(自分以外はあまり信用していませんから)、絶対信用できる医師を選び検査を受けます。お願いする先生の都合に合わせて仕事を休み、はるばる訪ねていくのもいといません。それだけ「観察力の違い」がわかっているからです。
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