大腸癌の分子標的薬は「多剤併用」の時代へ・・(Nature 01 March 2012)
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これは大腸癌細胞が増殖する際に最も重要な経路となるものです。
増殖因子(EGF)が受容体に結合し活性化すると・・・
RASが活性化されます。すると・・・・
次にRAFが活性化され細胞分裂のスイッチが入ります。
大腸癌では、このスイッチが「常にON」になっている訳です。
これらの知見は20世紀後半、癌遺伝子の研究が解明した最も医学的に重要な研究です(研究者の多くがノーベル賞を受賞しました)
21世紀は、この知見を元に「細胞分裂の鍵となるこれらの分子を抑える薬(=分子標的薬)」の臨床応用の時代です。
現時点で「増殖因子(EGF)受容体・阻害剤」と「RAF阻害剤」が開発済みです。
以前の記事で、最近「RAS阻害剤」も開発されたことを報告しました。 |
最新の「RAS阻害剤」は、まだ「動物実験」の段階ですが「増殖因子(EGF)受容体・阻害剤」と「RAF阻害剤」は臨床応用されています
このうち大腸癌に適応があるのは「増殖因子(EGF)受容体・阻害剤」だけです(記事)。
「RAF阻害剤」は適応ではありません。何故かというと、単純な話で「RAF阻害剤は大腸癌に効かない」という臨床試験の結果があったからです。
同じ経路に作用するのに、一方が効いて他方が効かないのはなぜか?この素朴な疑問を誰も真剣に問題視していませんでした。
今回の報告はこの問題を研究したものです。
RAFと増殖因子(EGF)受容体の間には「フイードバック機構」があり「RAFを阻害するとEGF受容体活性が亢進し最終出力は一定に保たれる」というのが、その理由であると解りました。
更に重要なことに・・・このグループはRAF阻害剤に増殖因子(EGF)受容体・阻害剤を「併用」すると大腸癌への治療効果が相乗的に増強すると報告しています。
私見 現在、大腸癌に適応のある分子標的薬は アバスチン(血管新生因子に対する抗体 ) と EGF受容体・阻害剤の二つなのですが、前者には最近効果を疑問視する報告があり問題になっています。
そういう意味でEGF受容体・阻害剤だけが「唯一つの希望」なのですが 「RASに変異が無い大腸癌」しか適応になりません。これは大腸癌の半分以下です。
RAF阻害剤とEGF受容体・阻害剤の「併用療法」は、理論的に「RASに変異の有る大腸癌」にも有効です(やや難解ですが、情報伝達の下流に作用するからです。細胞内情報伝達系を阻害するには「より下流」を狙うのが基本戦略なのです・・・・実はこれは私の学位論文のテーマでした)
この報告は大腸癌の分子標的薬治療に大きな転換を起こすと予想します(大きな問題は治療費が極めて高額になるということです)
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