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GrowthFactorと腸

GrowthFactorとは細胞増殖因子、わかり易く言えばホルモンのような物です

「女性ホルモンにより乳房が大きくなり、男性ホルモンにより筋肉が増大する」と同じと考えてください

細胞増殖因子の臨床応用は「180度逆の二つの方法」があります

一つは・・・・・細胞増殖因子を阻害することで癌細胞の増殖を抑える、方法

もう一つは・・・合成された細胞増殖因子を投与することで「消化管粘膜の傷の治癒」を促進する方法です

前者は「副作用(正常細胞の細胞分裂も抑えてしまう!)が強すぎる」という問題が、現在、盛んに議論されています。後者は(効果が確実なら副作用は軽いので)比較的早く臨床応用されるはずです

対象となるのは胃潰瘍、萎縮性胃炎、逆流性食道炎、慢性膵炎、肝硬変、クローン病、潰瘍性大腸炎などです(高価な薬品になるので重症の方が対象になります)

この細胞増殖因子投与による胃腸の新しい治療法をレヴューします(新しい知見がどんどん出ていますので随時更新します)

総論

Krishnan K,. 2010 May
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の患者の腸粘膜で「増殖因子が低下」していることが確認された。これは、逆に言うなら増殖因子が炎症性腸疾患の治療薬になる可能性を意味する。その中でも成長ホルモン(GH)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、上皮増殖因子(EGF)、コロニー刺激因子(GM-CSF、G-CSF)、グルカゴン様ペプチド(teduglutideが有望視されており現在臨床試験が進行中である。しかし、他の因子は今のところ効果は動物実験のみで臨床試験がおこなわれるかは未定

 

細胞増殖因子 発表のレビュー
EGF 上皮増殖因子 正常の大腸上皮細胞はEGFで細胞分裂することが報告されていますが、これを治療に応用するという報告は少ないです。大腸癌はEGFレセプターを過剰に発現しており、EGFを抑制することで大腸癌を治療するというのが最近の報告の主流です (詳しくは・・・・
HGF 肝細胞増殖因子 HGFは腸粘膜の増殖、障害の修復に重要
2003年度 坪内 博仁 宮崎大学・医学部・教授 遺伝子組み換えヒトHGF(rhHGF)はDSS腸炎ラットの腸粘膜修復に有効であ、抗炎症、抗アポトーシス作用を介する可能性が考えられた。潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に対する臨床応用が期待される。
FGF 
繊維芽細胞増殖因子

消化管における創傷治癒機転の分子生物学
2003年度 金井 陸行 財団法人田附興風会・医学研究所・第2研究部・主任研)日常の臨床現場で遭遇する消化管再建後の治癒不全、即ち縫合不全の発生を減じることを目的としてFGFによる治療の可能性を調べた。。胃および大腸の正常組織におけFGレセプターの発現は非常に低く、癌部においてその発現が高まることを見いだした。FGFを抑制することで癌を治療するのが今後の主流ではないだろうか

EP1 Epithelial progenitor 1という新しい膵臓増殖因子を発見した
Kritzik The Scripps Research Institute, La Jolla, CA, 92037, USA.
この新しい増殖因子は膵臓で発現しており、膵管上皮の増殖を促進する。慢性膵炎の治療に応用できるかもしれない。また腸管上皮の増殖も促進した

増殖因子の研究というと、私は岡部哲郎先生を最初に思い出します。私が東大の学生の時に「今後の癌の研究で増殖因子は最も重要な研究対象」と予言していました。高久文麿先生のもとで「肺癌の患者が白血球が多いのは、肺癌細胞が白血球を増殖させる物質を分泌させているから」という事実を突き止め、G-CSFを解明。これを、利用して白血球の減少(抗癌剤の副作用)を治療するという戦略を確立。今日の増殖因子医療の先駆けとなりました。