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新しい腫瘍マーカーP53抗体についての私見(本郷メデイカルクリニック 鈴木雄久)



P53というのは細胞が癌化するときに「鍵となる最も重要な癌抑制遺伝子です(詳しく・・・)」

最近、遺伝子関連のハイテクを謳った「高級・最先端ドック」が流行です。

2010年11月の時点で、当院では約10名の方がP53陽性(=大腸癌、食道癌の可能性あり)とのことで、検査を受けましたが癌の方は一人も見つかっていません

このようなハイテクが「早いスピードで」臨床に実用されること自体は非常にすばらしいことです。

しかし、実際の人体は試験管の中の理論どおりにはいかないバイアス(下記)が多くあります

私は遺伝子ドックを否定するつもりはありません。全て、科学的根拠に基づいたものだからです

しかし同時に「バイアス」があることも知っています(自分が分子生物がを研究していましたから)

患者さんには「無駄ではないが、過剰な期待、高額な費用に見合うだけの効果があるとまでは期待するのは時期早々」と説明しています  (2020年11月 鈴木雄久)



P53は「ゾンビ細胞のマーカー」(やや難解です。)

P53を一言で言うなら、次のようになります。「細胞が自殺しなければならないような異常事態(癌化、ウイルス感染、老化など)になった時に細胞を自殺させる安全装置」。したがって「P53を持つ正常細胞が人体に存在する」ことは「本来、あってはならない」事態であり、安全装置が作動せず「死ぬべき細胞が死んでいない(ゾンビですね)」」ことを意味します。人の癌の半分でP53の異常が確認されており、「P53および、これに類似するタンパク質」という意味では、ほぼ全ての癌で異常が見つかる「究極の腫瘍マーカー」であり現時点で対象になっているのは大腸・食道ですが、いずれは(広い意味で)「全ての癌が対象になる」でしょう。

「P53を使用した癌の遺伝子治療」というのは「ゾンビ細胞に安全装置を強制注入し本来の自然な死を起こさせる」治療です。

しかし、一方で「P53が異常」な方を検査しても、予想したように癌がみつからない。これを、どう考えたらいいのでしょう?・・・・人体のどこかに「検査で発見できないゾンビ細胞がいる」ことは間違いないでしょう。しかし、そのようなものが「本当に命に関わるのか」「その方が頻繁に、全身の詳細な癌検査を受けることが良いことなのか」・・・これは話が違います。

癌のP53遺伝子治療も「ある程度の効果は見られたが、当初、期待されたほどではない・・・・」というのが実情です。これは人類が「細胞の自殺のメカニズム」を、まだ一部しか知らないからでしょう。それでも効果の少なかった患者さんに「次は効くかもしれないから、もっとがんばりましょう」と言って高額な遺伝子治療を勧めるのは臨床的には問題があります。

かって分子生物学を研究していた者として、このような「ハイテクの臨床応用」を嬉しく思います

しかし、一方で「ハイテクをビジネスチャンス」と考える会社が「雨後のたけのこ」のように乱立していることに当惑を覚えます

「P53が異常だが、胃カメラ、大腸内視鏡で異常が見つからない場合、どうすればいいのか?」
「内視鏡、乳癌、子宮癌、前立腺癌検診、PET,CT、MRIを毎年受けるべきなのか?半年毎か?3ヶ月毎か?」
・・・・・・これが患者さんが持つ最大の関心です。しかし、この正答は医師にもわかりません。「正答が不明のままバスが発車した」ことは確かです。