「便潜血検査で早期癌が見つかるか?」・・・・これは非常に重要な御質問です。説明が不十分でしたので補足します。
まず、潜血検査は早期癌の半分をみつけることはできません。
潜血反応が陽性の人と陰性の人を大腸内視鏡をおこなうと、同じ頻度で「大腸ポリープ」と「早期大腸がん」がみつかるという報告もあります(東京女子医大データ)
しかし、進行癌は圧倒的に潜血反応が陽性の人の方に多くみつかります。(20倍以上)
しかし、逆に「潜血反応が陽性の人の方の大部分」は何も異常がみつかりません(つまり出血源は痔です)。
つまり潜血検査は圧倒的に多い痔の患者さんと少数の進行大腸癌の方を検出しているのが実状で早期の癌は検出されません
御相談のケースは、たまたま痔があり(日本人の3人に一人は痔があります)「痔のおかげで命拾いした」と考えます
このような幸運な方はたくさんいます。しかし、「毎年、便潜血検査を受けていて陰性なので安心していた。陽性になってから検査したら進行癌だった」という方もいます。
便潜血検査は功罪両方あると考えます
大腸癌は進行癌でも、手術で根治することが多いのです。
これは、たとえば、膵臓癌と対照的です。膵臓癌は小さいものでも根治が難しく、「検診の対象にはならない」といわれています。
便潜血検査は「日本人の大腸癌死亡を減らす」という国家的意義はあります。
しかし、「早期のうちに手術でなく内視鏡で治療したい」という個人レベルの希望をかなえるには不十分です
データ |
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便潜血検査の偽陰性率(見逃してしまう可能性) |
進行癌 |
10% |
早期癌 |
50% |
便潜血検査の癌的中率(陽性の人が癌である確率) |
約 3% |
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大腸進行癌の手術による根治率 |
全体で |
約 6〜7割 |
リンパ節転移の無い進行癌 |
約 8〜9割 |