いただいた質問の中から、他の患者さんや医療関係者に重要な参考になると思われたものを紹介します

 

大腸内視鏡検査が上手な医者を捜しています。 子供なのですこしでも 痛みを軽くしてあげたいのです。潰瘍性大腸炎を発病したのは7才の時でしたが 今は11才です。 いままで 大腸内視鏡の時はいつも目を真っ赤に腫らして帰ってきてました。 別に特殊な事情もないのですが・・・。 軽い麻酔を使うときいてますが、いつも痛いと言っていました。

、これから何度も検査をしなければいけませんから検査は苦しく なくしてあげなければかわいそうです 以前、某政治家のお孫さんが若年性大腸ポリープだったのですが、某小児病院で大腸内視鏡 がいれることができず、某ガンセンターにヘルプをしてもらったことがありまし た。特に難しい腸というわけではなく、私の医局(東大)でも随分、話題にな りました。 われわれのように、毎日、ガン検診で内視鏡ばかりやっているわけではありませんか ら・・・・小児科の先生の内視鏡技術が低いのはしかたないことです。 ただ、単に「苦しくない内視鏡」を希望でしたら、我々、大腸内視鏡専門医にまかせていただければご希 望にこたえられると思います しかし、小児はただ薬をだすだけでなく、精神的ケアーも含めて診療しなければなり ませんから、あくまでも小児科の先生が治療をするのがベストです。しかし、「餅は 餅屋」ですから、お子さんがつらい思いをされているなら、他の医師に検査をお願い するのも主治医の責任です。 いま、お子さんが検査でつらい思いをしていることを外来の主治医の先生に伝えて、 よくご相談ください

(解説、追加)通常、大腸内視鏡というのは大人の検査で、子供が受けることは珍しいことです。そして、医師には「主治医である以上、自分で全て責任を持ちたい」という誇りがあります。その結果、このような悲しい事態になります。このメール(悲痛な訴え)は小児科と消化器科の医師につきつけられた重要な課題です


虚血性大腸炎について はじめまして・・・ 私の父73歳のことで相談させていただきます。 8月の初め頃より食事のあとすぐトイレに行っていました。 腹痛もなくただの下痢かと思いあまり気にしていなかったのですが、 長く続きある日下着に血がついていましたのでトイレのたびに気をつけて いると、下血しているようでしたのですぐに(8/17)近くの病院で診察 すぐ入院となりました。 当初、担当医から「腸炎です。」 とのことで、数日おかゆ中心の食事が出ていたのですが、カメラの診察で「今日から絶食します」と、なり 以来点滴と食後のお薬のみです。 以後調子よく過ごさせてもらっていたのですが・・・ 数日前、担当医から「虚血性大腸炎です。とにかく絶食、あと抗生物質と止血剤、栄養は 点滴で十分に補っています。」と言われました。 なによりも父の身体の衰弱がひどく おむつはもちろんのことすこし起きあがることすらできなくなりました。 本人も気力でがんばるのですが寝返りもできないぐらい弱っています。 どうかご指導よろしくお願いいたします。

虚血性大腸炎が若い人に発生した場合は4〜7日位の安静入院でよくなるのが普通です。お父さんのように全身状態の悪い御老人に発症した場合は重症となることもめずらしくありません。その場合は発症してから数日以内に、腹膜炎、敗血症という経過をとります。ただ、8・17に発症とのことですので、急性期は無事、乗り切ったといえます。通常は虚血性大腸炎自体はすでに、治癒期に入っているはずです。

再度お願い致します 。 朝39度の熱があり 便の状態はまだ水溶性(溶けたチョコレ−ト状)です。。 発症してから数日以内に、腹膜炎、敗血症という経過・・・ とのことですが熱との関連があるのでしょうか? もう半月あまりもこのような状態ですので弱ってしまうのは 当然だと思うのですが 父の場合はかなり重症なんでしょうか? 劇症のケ−スにはあてはまらないのでしょうか?あまりの父の衰弱振りにとまどってしまい 勝手な質問ばかりになってしまいました。( 9月3日)

経過(8/17頃には食事がとれていた)からは劇症の虚血性大腸炎は考えにくいです。高齢のため、2次的な合併症(細菌感染による腸炎、その他の感染症、抗生物質の副作用による腸炎)をおこされているのでは?担当の先生とよく御相談ください

再々度の書き込みです その後の検査等で「潰瘍性大腸炎の疑い」と言われ、検査・・・結果 クロ−ン病と診断が下り今日、特定疾患医療の申請書を渡されました。 前回お返事いただいた時点ですでに治癒期に入ってるはずなのに? 少しも良くならない病状に不信に思っていました。 素人ながらこのHPでいろいろ調べ潰瘍性大腸炎、クロ−ン病では ないかと思い担当医に聞くと「思っていたより潰瘍がひどいです」の答だけ それから数日後CTの検査があり「小腸と大腸が癒着しているかも・・・」 と説明されました。 今も絶食、水も口を湿らせる程度、あとアルブミン,豆乳状の白い液体、を 鎖骨の所から点滴しています。 朝昼夕とオレンジのお薬があり(ステロイドだと思うのですが)看護婦さんが 砕いて溶かしたオレンジの液体を注射器で飲ませています。 辛抱強い父ですが、寝たきり状態になり一ヶ月ともなるとストレスの為か 精神的にもかなりまいってしまいました。 闘病とはいえ今までの治療は何だったのだろうかと思ってしまいます。 今の状態では他の病院にかかることもできず 一日でも早く帰りたいと言う父の願望もあり 家族としてはHP等でクロ−ン病について理解し食事や日常生活の面でできるだけ 快適に過ごしてもらえるように努力したいと思います。 エンタ−ルについて詳しく教えていただけますでしょうか

エンタ−ルクローン病の治療の中心となるものです 理論的にはエレンタールは中心静脈栄養(現在、お父さんがうけているものです)と全く同じで、「腸に全く負担がかかりません」 したがってエレンタールで栄養補給すれば、点滴が不要となり退院が可能となります しかし、今のお父さんは薬も飲めない状態ですのでエレンタールが飲めるか難しいです 一つの解決策として「内視鏡的胃ろう術」という方法があります これは胃カメラを使い、細い栄養チューブをお腹から胃に通すものです。中心静脈栄養もはるかに簡単で合併症のないものです。 このチューブからエレンタールを補給することができます あともう一つお父さんの年齢ですとクローン病よりも腸結核の方が頻度が多いです。クローン病と腸結核は(細胞検査でも)非常に似ているため誤診されることがあります。結核菌の検査を繰り返しおこなうよう、先生にお願いしたほうがよいでしょう

情報ありがとうございました。 信じられない事が起こってしまいました。 9/29が父の命日になってしまったのです。 先生からのメ−ルをプリントアウトし父に伝えると父はとてもうれしそうにし、 「若い人たちも食事制限でたいへんだろうな〜俺はもう歳なんやからがまんできるけど・・もっと若い人達もがんばっとるんやからがんばるで・・・」っといってくれました。 勇気を出して 担当医に(クロ−ン病)専門の病院で診察していただきたいのでいままでの資料をお借りしたいと 伝えると 「・・・クロ−ン病ってはっきり決まったわけではない」 との返事、担当医が資料を用意するはずだった9/28 突然危篤の連絡 次の朝、父は帰らぬ人となってしまいました。 落ち込んでしまいキ−ボ−ドにふれる事も出来なかったのですがやっとここに来ることが出来るようになりました。 この件でいかに病院、医者というものが患者の生死を分けると存在であるかということを痛感しました。 また、セカンドオピニオン、病気に関する情報の重要さを訴えたいと思います。

(解説、追加)実際に診察したわけではありませんので、「誤診があったか」についてのコメントは控えたいと思います。一般論ですが、腫瘍(ポリープやがん)の診断にくらべ、炎症性の病気は診断が難しく、治療が正しければ、すぐによくなるのに、誤診をすると正反対の治療でどんどんわるくなることがあります。

私たちの経験から・・

例1:前医で「潰瘍性大腸炎」と診断されステロイド(免疫力を低下させる効果があります)を投与され、「重症化」し、私たちの所へ紹介されました。実はチフスで、ステロイドを中止し、抗生物質を投与したらすぐによくなりました

例2:下痢が続き前医で「細菌性大腸炎(食中毒)」と診断され抗生物質を処方されていたのですが下痢がどんどんひどくなるとのことで受診しました。内視鏡をしたところ、実は抗生物質の副作用(薬剤性腸炎)でした。抗生物質を中止したところ、すぐによくなりました。通常は長期投与で起こるのですが、めずらしい経過でした

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実は身内が大腸ガン検診で潜血反応があり、受診して内視鏡による 検査を受けました。結果、ポリープが2つあり、その際に組織をとって 病理検査したところ、ガン化しているとのこと。 ここでサイト内で勉強した私に疑問が湧きました。 確か出血を伴うようになってからではかなり進行していて、開腹手術でなくては ならないと記してあったとおもいます。 出血を伴っていても粘膜下に達していないこともあるのでしょうか?

便潜血検査で粘膜内がんが見つかるか?・・・・これは非常に重要な御質問です。説明が不十分でしたので補足します。

まず、潜血検査は早期がんの大部分をみつけることはできません。
潜血反応が陽性の人と陰性の人を大腸内視鏡をおこなうと、同じ頻度で「大腸ポリープ」と「早期大腸がん」がみつかります。(専門医には有名なデータです)
そして進行がんは圧倒的に潜血反応が陽性の人の方に多くみつかります。
しかし、に潜血反応が陽性の人の方の大部分は何も異常がみつかりません(つまり出血源は痔ということ)。
つまり潜血検査は圧倒的に多い痔の患者さんと少数の進行大腸がんの方を検出しているのが実状で早期のがん(特に平坦型)が出血する可能性は低いのです。
御相談のケースは非常にラッキーにたまたま早期のうちに出血したか、たまたま痔があり(日本人の3人に一人は痔があり、いつ潜血反応が陽性になっても不思議はありません)陽性になったかのどちらかだと思います。

便潜血検査は早期がんの有効な検出になっていないというのは内視鏡専門医の多くには常識です。


お身内の方のように便潜血検査陽性となり検査を受けて早期がんを見つける方もたくさんいます。しかし、「毎年、便潜血検査を受けていて陰性なので安心していた。陽性になってから検査したら進行がんだった」という方をもっと多く私たちはみています・・・・

--- では便潜血検査は無意味か?・・・というとそうではありません。
大腸がんは進行がんでも手術で助かることが多いのです。
これは、たとえば、肺ガンと対照的です。肺ガンは小さいものでも手術で助かる可能性が低く、肺の専門家が「検診は無意味では?」という人もいます。
日本国民全体におこなっている便潜血検査は「日本人の大腸がん死亡を減らす」という国家的意義はあります。
しかし、「粘膜内がんのうちに治療したい」という個人の願望には不十分なのです


4年前にS状結腸に1.5cmのポリープを 内視鏡切除しており以来、毎年一回〜今後も 検査をしていこうと思う50歳男性です。 さて、こんなご質問は失礼極まりないと存じますがお伺いを致します。昨今は朝日新聞など連日のようにHCV(C型肝炎)の記事が掲載されております。 そこで検査の必要性と背中合わせに内視鏡による HCV他、ウィルスの検査時感染が気になります。 このことに関して少し触れられておられますが、その場で先生に大丈夫ですか?などと聞ける訳もなくそこでもう少し詳しく知りたいのですが、特にお聞きしたいのは術前に感染の有無は分かるので 内視鏡は感染者「用」と区別しているのでしょうか?

内視鏡検査が原因のHCV感染はすでに報告があり(米国、NEJM誌)、かなりの 数があるのではないかと思われています。 ちなみに我々医師自身が検査を受けるときは「検査が苦しいか?」よりも「消毒」に 最も気をつけます。

まずKさんは二つの点で誤解があります(これは多くの医師さえも誤解している点 です

1、術前の感染検査は無意味です
2、内視鏡は感染の原因には、まず、なりません

1、どういうことかといいますと・・・・たとえ術前にHCVだけ調べても、AID Sや他の感染症、(特にHBS陰性のB型肝炎)まで、すべてを調べることはできま せん。全ての患者が「感染症有り」とみなし「一例づつ完全消毒すべし」というのが 学会のガイドラインです。しかし、このガイドラインを守っていない施設がまだまだ 多いのが問題となっています。

2、感染の危険が高いのは内視鏡本体でなく、血液や肉片の付着する処置具(ポリー プを切除する電気メスなど)なのです。 ガイドラインでは処置具はオートクレーブ(高圧煮沸)が必須とされています。(内 視鏡本体は消毒液浸潤でよい)。専門の医師でないとこういったことを知らないた め、内視鏡本体だけ時間をかけて消毒して処置具を完全消毒していない方が多いです 本郷メデイカルクリニック 鈴木

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