薬物療法はイボ痔(内痔、外痔)、切れ痔の治療の基本となるものです。
痔の薬物療法は大別して飲み薬とおしりにつける薬(なんこう、座薬)があります
飲み薬は便を柔らかくする薬が中心です。軽めの下剤といえます。便がかたくなりますと病気が悪化します。すると排便がつらくなり、ますます便秘が悪化し「悪循環」におちいります。飲み薬によりこの「悪循環」を断ち切ります。ただ薬が効きすぎて下痢になるのも逆効果です。「柔らかめ」になるよう、量を加減することがポイントです。
代表的なものは漢方薬の乙字湯(おつじとう:鐘紡)です。肛門科外来には「おつじとう」を長年、愛用されているファンが多くいます。
なんこう、座薬は基本的には成分はどれも似たようなもので痛みを抑える鎮痛薬、麻酔薬と炎症を抑える薬(ステロイドまたは非ステロイド系抗炎症薬)が主成分です。一般に朝、夕の1日2回使います。一般には排便後に使いますが、排便痛がひどい時は、排便の5分前に薬をいれて「効いてきた」頃に排便するというのも有効です。気をつけなければならないのは、長期に使っていると肛門皮膚が薬のためかぶれてしまうことがあるということです。使っていてかゆみがでてきたら中止すべきです。
切れ痔の薬物療法
切れ痔はせまい肛門を硬い便が通過するために肛門がさけるのが原因です。
したがって便を柔らかくする薬が非常に効果的です。
またニトロ軟膏といいまして肛門括約筋を弛緩させる作用のある軟膏も有効です
「肛門が少しせまめ」位なら下剤とニトロ軟膏でよくなります。
「肛門がガチガチに硬く指も入らないくらいせまい」ようならニトロでも広がりません。手術(LSIS、SSG法)に踏み切った方がよいでしょう
イボ痔(内痔、内外痔核)の薬物療法
出血や痛みが主な症状で「肛門からの脱出(脱肛)」が無いなら薬物療法がかなり有効です。これらは痔核が炎症を起こしているのが原因ですから、炎症を抑える薬の入ったなんこう、座薬によりかなり症状は消えます。
しかし、「ひんぱんに脱出する」ようになったら、余分な粘膜のたるみができてしまったことを意味します。薬ではこのたるみを消失させることはできません。たるみを消失させる処置(輪ゴム療法、注射療法、手術)に踏み切った方がよいでしょう
痔瘻、肛門周囲膿瘍
抗生物質で一時的な症状の改善は得られます。軽症の場合は抗生物質で治癒することもあります。しかし、多くの場合は手術による根治が必要です。