以前、Myerson博士達のグループが大腸癌の「全遺伝子解読」成功の記事を書きました
この研究からは膨大なデータが得られており博士達は現在「データの解析」を進めているようです
最新の情報として・・・・今回、Myerson博士達は大腸癌の中には 「フゾバクテリア菌」が検出されることを報告しました。(同時に別のグループも同じ結果を報告)
このような場合、可能性として二つ考えられます
(1)フゾバクテリア菌が大腸癌の発癌因子の一つである・・・・この場合、除菌による癌の予防が考えられます
(2)フゾバクテリア菌が大腸癌の中で発育しやすい。つまり癌化の結果である・・・この場合、便中の菌を調べることで大腸癌をスクリーニングするという可能性が考えられます
(1)なら大変な発見です。
現在、胃癌(ピロリ菌)、肝臓癌(肝炎ウイルス)、子宮癌(HPVウイルス)、いくつかの白血病、リンパ腫(ATL,EBウイルス)が「感染による癌」であることが確定しています。
「大腸癌も便中の何らかの病原体による感染による癌ではないか?」という仮説があり実は現在まで、非常に精力的に研究されてきました。
過去にHPVウイルス、パルボウイルス、ポリオーマウイルス、サイトメガロウイルスなど多くの「容疑者」が精力的に研究されてきましたが「真犯人」とは確定されませんでした。
現在、「大腸癌=感染説」を最も精力的に研究しているのがノーベル賞受賞者でもあるハウゼン博士です(記事)
また 畠山昌則博士は「直接に発癌物質を持つ細菌=発癌性細菌」という概念を確立しました(記事)
また細菌というのは「細胞の外で増殖するもの」というのが定説でしたが、今日、多くの細菌がウイルスにように細胞内に進入して我々の細胞の代謝を変化させている(つまり発癌の原因になりうる)ことが解明されました(記事)そしてフゾバクテリア菌も「細胞内に侵入する細菌」です。
「細菌と発癌の関係」は、新しい分野であり今後、大きな発展が期待されます。
報道を伝えるABCニュースのサイト
以下少々脱線・・・・・今回話題になっている「フゾバクテリア菌」は本来、歯周病の原因となる菌です。最近、口腔内病原菌が全身の病気と深い関係があるようだと注目されています。食事や歯磨きで我々は日常的に微小な傷を口腔内粘膜に作っており「口腔内菌による無症状の慢性的菌血症」が起きていると考えられています。動脈硬化は血管の内側(内皮細胞)の異常が原因なのですが、この初期の異常に、口腔内菌が関与しているという説があります。当初は「珍説」扱いだったのですが今日は専門家に広く認知されています。この研究が引き金となり「他の病気とも関係があるのではないか?」という研究が盛んにおこなわれているのです。