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21世紀の医療は分子生物学により革命的な変化を迎えるといわれています。大腸肛門病学が分子生物学により、20世紀にどのように変わったか?21世紀にどのように変わるか?をレビューしましょう。(本郷メデイカルクリニック 鈴木雄久)
  • 大腸ガンの原因遺伝子が見つかった
  • ポリープとガンの関係が遺伝子により証明された
  • 大腸ガンになりやすい体質が見つかった
  • 内視鏡を使った遺伝子治療が始まった
  • 新しい免疫抑制剤による炎症性腸疾患の治療
  • 肛門ガンの原因ウイルスの発見
  • 亜硝酸製剤による切れ痔の治療

大腸ガンの原因遺伝子が見つかった

20世紀における大腸病学の最大の発見がこれです。もともとは家族性大腸ポリポーシスという遺伝性大腸ガンの原因遺伝子としてAPCという遺伝子が発見されました。やがて、このAPCは特定の遺伝病だけでなく一般の方に見られる大腸ポリープ、大腸ガンの原因遺伝子であることがわかりました。
家族性大腸ポリポーシスの方は生まれつき、APCが変異しているため、非常にポリープ、ガンができ易いわけです。 より詳しく


ポリープとガンの関係が遺伝子により証明された

「大腸ポリープが本当にガンになるのか?」大腸ポリープが発見されたら通常は切除してしまいます。ガンになるかを確かめるために<ガンになるまで経過を見る>ということは許されません。そのため、この疑問は長い間、証明されることなく学会で議論が続いていまた。
大腸ガンの遺伝子の発見がこの疑問を解決しました。大腸ポリープと大腸ガンは同じ遺伝子に同じような変異がおきていることがわかったのです。これは両者が「成長段階の違いであって遺伝子レベルで本質的には同じもの」であることを意味します。また、逆に一部のガンには異なる遺伝子が関与していることもわかりました。これから一部、ポリープとは関係の無いガンもあることが確認されたわけです

参考 大腸ポリープとガン 


大腸ガンになりやすい体質が見つかった

今まで私たちは漠然と「OO家の家系はガンが多いんです・・・」などという話をしていましたが、このような好発ガン家系の遺伝が少しづつわかってきました。現在注目されているのはHNPCCという家系です。HNPCCの家系の方は遺伝子の損傷を修復する力が弱く、大腸をはじめいろいろなガンになりやすいことがわかっています。
HNPCC家系はおそらく全人口の4〜5%という非常に多い頻度が見積もられています。欧米でHNPCC家系をスクリーニングしようという案もでました。しかし、これは患者さんに「病気を早期発見させる」という意義と同時に、特定家系を差別しようという発想につながります。「治療法の無い遺伝病を遺伝子診断することの倫理的問題」は極めて深刻です。より詳しく


内視鏡を使った遺伝子治療が始まった

遺伝子治療は最初、血液の病気から始まりました。これは血液細胞は対外で培養するのが容易で、高率な遺伝子導入が可能だったためです。対外で遺伝子を導入したあと血液を体内に戻すのが一般的でした。
そしてやがて、高効率なウイルスベクター(遺伝子を細胞に導入する運びや)の開発により人体内の臓器に直接、遺伝子を導入することが可能となりました。消化管のガン(胃がんや大腸ガン)は患者さんが多く、かつ内視鏡での直接遺伝子導入が可能なため今後、遺伝子治療の中心となる分野です。

遺伝子治療について


新しい免疫抑制剤による炎症性腸疾患の治療

炎症性腸疾患は食事抗原や腸内常在細菌にたいする免疫反応が亢進しすぎることが原因です。したがって免疫を抑える薬(免疫抑制剤:臓器移植の時に拒絶反応を抑える薬です)が理論的な特効薬になります。
しかし、古いタイプの免疫抑制剤は免疫反応を広範囲に非選択的に抑制します。そのため全身的な副作用が問題となりました。20世紀は免疫のメカニズムが分子レベルで解明されました。その結果、炎症性腸疾患で最も悪さをしている免疫細胞、免疫物質(サイトカインといいます)がわかりました。これらを「選択的に狭い範囲で」阻害する薬が開発されています。これらの薬は「最小の副作用で最大の治療効果」をえることができます。


たとえばクローン病に使われる免疫抑制剤で古い薬のイムランという薬は細胞分裂を抑える薬です。そのため全身に作用します。クローン病の原因としてマクロファージ(MΦ)の作るTNFという物質が大きな役割をはたしていることから TNFだけを選択的に阻害する薬が開発されました。 より詳しく

21世紀は疾患のキーとなる分子を特異的に作用する薬(分子標的治療薬)の時代といわれています


肛門ガンの原因ウイルスの発見

肛門ガンの発生にパピローマウイルスという発ガンウイルスが深く関与していることがわかりました。パピローマウイルスは皮膚がんや子宮ガンの原因となる「人類に幅広く蔓延した発ガンウイルス」で、遺伝子配列の解明もすみ、現在、発ガン遺伝子の機能が精力的に研究されています。遺伝子組み替えによるワクチンも研究されており、21世紀には「ワクチンでガンが治る、予防される」ことになるでしょう より詳しく


亜硝酸製剤による切れ痔の治療

以前より血管内皮細胞は平滑筋(内臓についている筋肉)を強力に弛緩させる(緊張をゆるめる)物質をつくることがわかっていました。(EDRFと呼ばれていました)。長らくなぞの物質だったのですが、これが一酸化窒素(NO・・・排気ガスの成分としてお馴染みですね)であることがわかりました。そして一酸化窒素を利用して平滑筋を弛緩させることが様々な病気の治療に応用されるようになりました。

切れ痔の根本原因は肛門が狭いことにあります。したがって、肛門括約筋を弛緩させる薬は切れ痔の特効薬となります。亜硝酸製剤は体内で分解されて一酸化窒素を放出します。亜硝酸製剤を肛門に塗りますと確かに肛門がゆるくなり切れ痔が治ります。(ただ血管も拡張して頭痛を起こす人が多く、そんなに多くは使われません)
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